防災ギター

インド変異株の増加と東京五輪・パラリンピック


やはりインド型変異株感染者が増加してきた。国立感染症研究所によれば、インド型の国内感染例が初めて検出されたのが20日(日本経済新聞2021年4月28日)。1ヵ月後の5月26日、厚生労働省は国内でこれまでに計29人がインド型に感染したと発表した。海外渡航歴がなく、感染者との接触も明らかでない事例も報告された。インド型変異株の市中感染の拡大が始まっていると捉える専門家もおり、英国型と比べて感染しやすさが1.5倍ともいわれている(朝日新聞2021年5月27日から抜粋・引用)。

緊急事態宣言下のこの1ヵ月、誰もが感染拡大防止に神経をとがらせて、これ以上の感染者数を増やさぬように様々な感染抑制措置を施してきたにもかかわらず、我々の対応の網の目をすり抜けるようにインド型変異株感染者がじわりじわりと増えてきています。

先日のある新聞では、井上達夫・東大名誉教授の話が載っていました。菅首相は説得力ある論拠を示さぬまま、東京五輪・パラリンピックの開催に「全力を尽くす」「安全安心な大会に」と繰り返す。こうあってほしいという願望思考ばかりで、危機の実相を直視しようとしていない。為政者は有権者に説明責任を果たさなければならない。民主主義の基盤だ。それを怠る彼らにより自覚を促すため、「答責性」という厳しい言葉をかみしめてもらいたい。このまま五輪を強行し、取り返しのつかない被害が出たらだれが責任を取るのか。誰の首が飛ぶのか。そうした緊張感をもって有権者に向き合い、応答する重い責任が為政者にはある(朝日新聞2021年5月27日から抜粋・引用)。

街にはヒトが溢れ、実効性が伴っていない緊急事態宣言の延長に次ぐ延長で、一体いつまで緊急事態なのかと正直思います。国内感染の減少の兆しが明確でない現在、どうして東京五輪・パラリンピックを安全安心に開催できるのか、政府の見解は、説得力のない希望的観測である印象をとても強く受けます。

能村総研が東京五輪・パラリンピック中止の場合の経済的孫出は1兆8108億円(運営費1兆2070億円、チケット販売900億円など)、無観客で開催した場合の損失は1468億円とする試算を発表。仮に中止しても損失は景気の方向性を左右するほどの規模ではなく、緊急事態宣言の方が影響は大きい。昨年4月の初回は、約6.4兆円、2回目は約6.3兆円の損失につながった。個の記事は、五輪の開催や観客制限は国民の生命や安全を守る点から判断されるべきと締めくくっています(朝日新聞5月26日)。

もともと3密の回避は、密閉、密集、密接のうちひとつでもあれば感染リスクが高まるというものでした。最近の街中の様子を見ていると、3つの密が重なる条件では感染リスクが高まると、解釈が少しゆがめられているような気がします。変異株では「1密」でもさらに感染リスクがより高くなるという意識を今一度、再認識していきたいと思います。