防災ギター

アビガンの有効性や安全性は大丈夫?・・・


4月30日を1回目として、最近の新型コロナ関連の新聞記事などを読んで感じたことを、数回にわたって書いています。今日はその7回目です。

・1回目:「ワクチン、治験待たずに許可」って大丈夫なのかしら?・・(4月30日)

・2回目:変異株の怖さが、私たちに正しく伝わっていないのでは?・・ (5月01日)

・3回目:新聞の見出し『「なんちゃって急性期」増殖・・』って何?!  (5月02日)

・4回目:科学的根拠に基づいて対策を・・・・・・・・・・・・・・・  (5月03日)

・5回目:すべてが綱渡り状態、大丈夫かなぁ・・・・・・・・・・・・ (5月04日)

・6回目:これから先、一体どうなってしまうのだろう・・・・・・・  (5月05日)

・7回目:アビガンの有効性や安全性は大丈夫?・・・・・・・・・・・(5月06日)

4月22日の日本経済新聞に『「アビガン」治験再開』という見出しの記事がありました。正直「あれっ?・・今頃に治験再開、まだそんな段階なの?・・・」という率直な印象を持ちました。アビガンは1年前、安倍前首相が「今月中の承認を目指したい」と発言した新型コロナウイルス治療薬の候補薬剤です。以下にアビガンに関する新聞記事を集めてみました。

日本で承認された新型コロナ治療薬は、既存薬をコロナ向けに転用した「レムデシビル」と「デキサメタゾン」の2種類のみ。現在3例目の治療薬として、既に関節リウマチとアトピー性皮膚炎の治療薬である日本イーライリリー社の「バリシチニブ(商品名オルミエント)」が間もなく承認される予定です。同社が2020年12月に承認申請。対象は肺炎で酸素吸入が必要な中等症~重症の成人患者です(日本経済新聞2021年4月22日から引用)。

一方、冒頭で言及した富士フィルムのアビガン、1年前からの動向が、他社製品と比べて何か、腑に落ちないところがあります。安倍前首相が、有効性を示すデータがまだ出ていないのに、「月内承認をめざす」と異例の発言。確立した治療法がない中で、安倍政権は、日本初の治療薬誕生という目標は、国民に訴える「希望」の象徴になるととらえました。そして首相官邸側は前のめりでこのアビガンを推します。複数の治療薬候補がある中で、安倍前首相がアビガンだけに触れることも度々ありました。(朝日新聞2020年5月27日から引用)

しかし薬は本来、厳格な臨床試験(治験)をして安全性と有効性を確認したうえで承認されるものです。その過程で適切さに欠けると、過去の薬害の歴史を繰り返しかねず、厚労省からは、当初は官邸の積極姿勢への反発がありました。しかしその後、厚労省でも異例の動きがありました。国などの補助金を受けた公的な研究で効果や安全性が確認されれば、薬事承認に必要な治験結果の事前の提出は必要ないとする特例を設けました。これに沿うと、治験以外のデータをもとに承認申請が可能になります。アビガンの早期承認を意図したものでした(朝日新聞2020年5月27日から引用)

アビガンはこれまで、安全性と有効性を確認するために、国内において主に3つの研究(観察研究、特定臨床研究、単盲検治験)が進められてきました。しかし観察研究、特定臨床研究いずれも、偽薬を使った試験ではなく、また偽薬を使っていても(単盲検の治験は)症例数が少ないなど、有効性に関する科学的根拠が乏しいとのことです(朝日新聞2020年5月27日)。

専門家は、安倍前首相や大臣が度々アビガンに言及している点について、「公権力を担う者が特定の薬の名前を挙げて承認について言及するのはよくない。他の薬の審査との公平性が失われる懸念がある。結果として、薬の承認過程の信頼性を損なうことになる」と指摘しています(朝日新聞2020年5月27日)。

(続く)